Dialog in the dark

2004年8月29日、東京、雨。

世界が変わった日。
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2004年夏、東京・青山の梅窓院祖師堂で開催されていた
ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(DID)。
とあるメールマガジンで紹介されていたそのイベントに惹かれ、
予約をして一人で参加することにしました。

そのイベントは、おおざっぱに言うと「真っ暗闇を体験する」というものでした。
案内役のスタッフは、視覚障害者の方。
私が参加した回の参加者は10名ほど。
各自、入り口で白杖(はくじょう)を渡され、真っ暗な世界に入ります。

中に入ると、完全な暗闇です。いくら目を開こうとも、何も見えません。

私は田舎の山奥育ちなので、暗闇には慣れている方だと思っていました。
(肝試しとお化け屋敷は別ですが・・・)
しかし、光がひとつもないというのはこういうことなのか、と分かりました。
月の光も星の光も、動物の目が光るのもなんにも見えない、ほんとうの闇。

<光のない世界へ>

案内役(アテンド)の方の「声」を頼りに、進んでいきます。
その暗闇の世界に作られた町のなかには、
公園があり、川が流れ、踏み切りや電車のホームもあります。

初めは、自分と周りの人やものの距離、方角、
何もかもが分からなくて、恐怖心ばかりがありました。
どちらに何歩進めばいいのかわからない。
壁にぶつかる、人にぶつかる、段差で引っかかる。
手探り、すり足でしか歩けませんでした。
もちろん白杖でそこらじゅうを探りながら。

しかも他の方は皆さん、2人ずつのグループで参加されていて、
一人なのは私だけ。

とても、心細かった。
手をつなぐ人も、話せる人もいない。
ついて来ているかと心配してくれる人もいません。

でも、初めに、水のある場所に行き
その水に手をつけるときに、周りの人を互いに誘導するようにと言われました。
戸惑いながらも、他の参加者に声をかけます。
「もう少し、前です」
「手をもっとのばして」

もちろん、見えないので、手で人との距離を確かめます。

その後、だんだん道を進んでいくにつれて
自然に参加者同士で声を掛け合うようになりました。
「そこに段差がありますよ」
「坂になってます、気をつけて」

心細さもなくなってきました。
顔を見ることのできない人たちと、少しずつ心がつながっていく気がしました。

次第に、聴覚が鋭くなっていくのに気が付きました。
はじめのころは「こっちでーす」と言われても、
その声がどこから聞こえているのか
さっぱり方向が分かりませんでしたが、
慣れてくると、その声のほうへ正確に進むことができました。
視覚に頼ろうという気持ちも、それにしたがって、薄れていきました。
目を閉じても、怖くなくなりました。開けていても、同じことだから。

川が流れる音、芝生の草のにおい、
電車のホームで聞こえる発車ベルや電車が動く音、
足の裏に感じる、土とコンクリートの違い。
聴覚だけでなく、あらゆる体の感覚が研ぎ澄まされていくようでした。
日常の生活で、いかに目で見る「視覚」をたよりにしているか、
他の感覚をほとんど使っていないかということを体ではっきりと感じました。

最後のほうになって、バーに入りました。もちろん、何も見えませんが、
ウェイターの方が案内してくださいます。
ドリンクを注文して、席について、それをいただきました。
そのとき、案内役の女性が、歌を歌ってくれました。
彼女は実は、ソプラノ歌手だったのです。
歌ってくれたのは、「赤とんぼ」。素晴らしい歌でした。
じーん、と心のなかに染みてきました。

あっという間に過ぎ去った時間。
最後の方は、もっとこの世界にいたい、と思っていました。
恐怖はなくなり、今までに感じたことのない心地よさがありました。

会場を出て明るい世界に戻ったとき、「見える」ということがすごく新鮮でした。
目が慣れるまではぼんやりしていた世界が、
しだいに色がはっきりと鮮明になっていきました。

すごい体験をしてしまった。
想像していた以上の感動がありました。
今回は一人で来て良かったけど、
今度はだれか大事な人と来たいなと思いました。

その日の帰り道は、どこを歩いても、見えるものも聞こえる音も、
流れてくる匂いも、新鮮でした。
世界が変わるってこういうことなんだと思いました。
その頃私は疲れ果てていて、何もかもが悲しかったのだけれど
ここで、生きるうえで何かとても大事なものを感じられた気がしました。

その後、私はまわりの色んな人にこの体験を語りました。
整体治療でいつもお世話になっていたSさんにも。すると、
「あ、それなー、チラシ持ってて配っててん。友達がやってんねん。」
それで、私のグループを案内してくれた女の人の特徴を話しました。
するとなんと、「それ、友達や!」とその人が驚いて言いました。
彼女の名前にも覚えがありました。

アテンドスタッフはたくさんいらっしゃって、
一日に参加するグループもかなり多かったのに、すごい偶然。
本当にびっくりです。感動がまた増えてしまいました。

この年はちょうど、さだまさしさん原作の「解夏」という小説が
ドラマ化され、「愛し君へ」というタイトルで放映されていました。
このドラマは見ていましたし、小説も読みました。
次第に光を失って、目が見えなくなった後の世界って、
いったいどんな風なのか
生きていく希望が持てるのか
想像することは難しく、頭の片隅に何かがひっかかっていました。

けれどDIDで、少しの時間ですがそれを体験することによって
ほんの少しかもしれませんが、色んなことが分かりました。
目が見えることの大切さも、もちろんですが
見えない世界で生きていくことの先にあるのは、
決して絶望だけではないこと。
自分の感覚を精一杯使うことの喜びも感じました。


ドイツから始まったこの試みは、世界各国に広がっています。
日本でもこれまでに東京、仙台、神戸などで開催されています。

これを読んで気になった方は、ぜひ実際に体験してみてください。
きっと、何かが変わります。

東京・赤坂で11月20日まで開催中です。チケットは残りわずかです。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2007 東京



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原文は2006年2月に書いたもの。少々直しました。
ずっとこの記事を出せずにいましたが
東京開催が決まって、遅れましたがようやくUPしました。
またいつか、関西での開催があればいいな、と思います。
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by ekla-cafe | 2007-09-17 18:13 | log


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